終わりと始まりの間に。


c0097879_0372942.jpg


この薔薇は先週末にご紹介したハイブリッド・ティーの『根室の朝』です。
今日の暖かさで内側から一気に弾けるように先端が割れて...
太陽がいちばん高くなった頃には見紛うばかりの姿になっていました。

長かった冬を経て、沢山の眠っていた草花たちが芽吹きを告げた中。
まるで取り残されたかのように ひっそりと蕾は膨らみ...。
冬から春、どちらの季節にも属さないような姿で
ただ一輪...ゆらゆらと枝先に揺れていました。

日本で作出された薔薇は 我が家には片手ほどもありません。
我が国を代表する偉大な育種家、
薔薇の父...そして「ミスターローズ」とも呼ばれた
鈴木省三氏の創り出した薔薇。
育てていらっしゃる方も多いかもしれませんね。

この『根室の朝』を迎えた日の事はあまりよく覚えていないけれど
きっかけとして何よりもまず...その名前が素敵だと思ったからです。
「根室」でもなく、ただ「朝」でもなく...
『根室の朝』という響きに とても洗練されたものを感じたのです。
春から夏の間は丸弁の抱え咲きのような感じで
正直云ってそんなに好きな花型ではありませんでした。
花弁の縁が外側に向かって薄く捲れるさまは
剣弁の薔薇だとクラシカルな雰囲気を醸し出しますが
丸弁とあっては...なんとも形容しがたい曖昧な印象だったのです。

c0097879_313422.jpg


ただ...主幹こそガッチリしていますが、あくまでも枝は細くやわらかく
いつも項垂れて咲く姿には古いティーローズの風情が漂います。

このひと枝も非常に細く、そのままでは花器に挿す事も出来ず、
ちょうど剪定したばかりのレモンティーツリーのひと枝を花留めに
Uの字を逆さにしたように大きく折り曲げて挿しました。
強い風に煽られてかなり痛んでいますが、
壁のしみまで吸い取ってしまうような存在感。
尚且つ我が身の傷さえも歓びに変えてしまう...
そんな懐の深さを感じた次第です。

パラフィンのように薄い花弁は内側が透けて見えるほど。
そして特出すべきはその香り!
ティー香よりもダマスク香がより強く感じられます。
花弁が綻ぶ頃には熟れた苺のような甘酸っぱさも入り交じって
風が入る方の窓辺に挿すと
たった一輪でも部屋の空気を変えてしまいます...。

薔薇を育て始めてもう何年になるのでしょう。
...といってもまだまだ両手には足らず、
薔薇のなにものをもわかっていないような...
そんな気がする時さえあります。
ただ今年程(昨年四月〜今年三月まで)12の月 漏らさず
様々な薔薇の姿に出逢えた年はかつてなかったかもしれません。
以前、駒場バラ園のおばあさまに薔薇を包んでもらっていた時の事、
「人間も一緒ですよ...丈夫で繰り返しよく咲いて...ね?」
そんなお言葉をいただいた事がありました。
出逢ってからというもの...こんなに素敵な姿を見たのは初めての事。
加えて...まだまだ肌寒さも残るこの三月に咲いたというだけで
きっと今後も忘れる事はないでしょう。

僕は根室を訪れた事はまだありませんが、
霧が深く、坂道の多い素敵な街だと聞いた事があります。
いつの日か岬に立って 靄がかかった遥か彼方の海を眺める...。
朝日の昇る最東端...切り立った崖に立ってみたいものです。

c0097879_0375467.jpg

〔根室の朝 (Hybrid Tea) /鈴木省三:Japan:1957〕
〔レモンティーツリー(Leptospermum petersonii)〕
〔フトモモ科:レプトスペルムム属〕

此処を訪れてくれるすべての人の日曜日の朝へ。

G d D
[PR]
by MiscellaneousOGRs | 2008-03-09 00:00 | 定点観察
←menuへ