七月の孤児 〜『Orpheline de Juillet』。


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〔Orpheline de Juillet (Gallica) /unknown: unknown:pre-1836〕

今年の雨はとても気まぐれ。
天と地。どちらに寝返るのも既に面倒になったのかもしれませんね。
苔むした湿度を曖昧に残したまま、暦は七月になりました。
水は本来、とても自由なもの。
庭の隅々まで流れ滲み渡る。
そして時に行方知れず。

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薔薇は例えようもなくあさましい。
限られた環境の中に放り出されると、
同じ種族の中でも我先にとばかり天に向かって水を欲しがる。

ただ隣り合わせたというだけで、みず知らずの樹によりかかり、
鋭い爪で巻きつき這い昇り太陽を独り占めしようとする。

薔薇は例えようもなく甘ったれ。
自分から離れてゆく情の気配を感じた途端、
萎れてみたり、どす黒くその身を染めて俯きながら声も発さず訴える。

水を欲しがり、肥えを欲しがり、より広い棲処を欲しがる。
暑いのは嫌い。寒いのも嫌い。
豊かな花弁を乱す強い風も嫌い。
けれど穏やかな無風状態に身をおくのも我慢ならない。

適度に病気になって、適度にその身を窶し、誰彼ともなく哀れを乞う。

人間なんてもっとあさましい。
気分次第で窮屈な場所に閉じ込めたがる。
病を呼ぶのは、そう...自分勝手な「人」の気まぐれ。

別にふかふかのベッドじゃなくても平気です。
砂地だって平気。
そう...、大概な事は平気なんです。
どんな夜だって眠りにつく事は出来る。

薔薇はこの上なく寛容ですべてを受け入れる。
どんな生い立ちの、どんな生業の、どんな容貌の人とでも。
そう...誰とだって仲良くできる...。

生きて行く上で、太陽が必要なのは人間だって同じです。
授かったからにはこの命を守り抜きたい。そう、手段なんて選ばないんです。

鼓膜をくすぐる美しい音楽でさえも。
喉が震えるほど甘く香り高い果実でさえも。
今まで出逢った中で最上のもの。
愚かな人間にそう思わせる力。

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この薔薇は、今年たった一輪だけ咲きました。
やわらかな緑の衣は、朝露よりも瑞々しく目に眩しい。
鱗を思わせる、翳りを幾重にも纏い捩らせた花弁。
どんな痛みでさえも自分の色にしてしまう力強さを感じます。
光の射す方向から...、闇が潜む影の裏側まで知り尽くしている。

瞬時には正体の掴めない、なんとも妖しい匂い。
さほど強くはありませんが饐えた果実のような。
若々しい生まれたばかりの新芽のような。

持ち合わせている顔もきっとひとつではないのでしょう。

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彼女の名は『七月の孤児』。〜「Orpheline de Juillet」。
なんとも力強くたくましい甘美な響きです。
たった今、新しい夏に向かって旅に出たばかり。
きっと来年の5月まで戻ってきません。

成長して、ひとまわりもふたまわりも大きくなって帰ってくるのでしょうか?
どんな事があっても守り抜き、手塩にかけて育て、共に暮らしたいと思っています。
これから先、その名は変わらずとも、少なくとも我が家ではもう孤児ではありません...。

G d D
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by MiscellaneousOGRs | 2007-07-01 00:00 | Sweeter than Sweet
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